彼は私を狂愛した。
私はいつものように仕事をしていた。
帰りに珈琲を買おうと思い、近くのコンビニに入った。
「…ぃらっしゃいませー」
やる気のなさそうな従業員だな…
高校生くらい?
私は珈琲をレジに置いた。
「…120円です」
もっと声張ってよ…
ため息をつきながら従業員の顔を見ると
1番見たくなかった顔が私の視界に映った。
それは彼も同じみたいで
私だと気づいた途端目を見開いて動かしていた手を止めた。
「…み、おん…」
その低くて響く声。
綺麗な黒髪に鋭い目
そして透き通った白い肌
見間違える訳がない…
どっから見ても慧兒だった。
「慧…兒…」
「久しぶり…」
慧兒が態とらしく笑う。
「なんで…こんな所に…」
そう尋ねると慧兒は一回大きく息を吐いて再び手を動かし始めた。
「うん。別に意味はないんだけど…
なんとなく。あそこ飽きたから…」
「そっか…」
それ以外私は何も聞かなかった。
そして慧兒に別れを告げようとした。
「じゃあね」
私が小さく手を振ってコンビニから出ようとすると
後ろから手首を掴まれた。