彼は私を狂愛した。
朝、目覚めるとテーブルには悟の手料理と置き手紙があった。
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魅音へ
ちゃんと飯食ってけよ。
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力強く書かれた悟の文字。
凄く下手な文字だけど暖かさが伝わってくる。
私は用意されていた朝食を食べ
仕事に向かった。
悟は正社員。
私はと言うと場所は全く違うけれど前と雰囲気の似た小さなレストランで働いている。
新しい仕事に慣れなくて結局レストランのバイトを雇ってもらった。
私たちが住むマンションからは案外近くて歩いて行くことが出来る距離。
カランカラン〜
中へ入ると相変わらずお客さんは少ない。
だけれど従業員の方はみんなとても明るくて親しみやすかった。
「あ、魅音ちゃん!おはよー!」
そう言って話しかけてくれたのはこのレストランの店長。
店長は明るくて優しくて頼れる…そんな女の人。
「おはようございます!」
私も明るく振る舞って挨拶をすると
また優しい笑顔を返してくれた。
だけど店長は途端に表情を変えた。
「そう言えばさ、魅音ちゃん。最近店の外に変な男の人が来るの…」
「え…?」
「なんかね…話に行こうとすると逃げられるの…まるで誰かを待っているみたいにね」
なにそれ…
__ドキン
まさか…
「魅音ちゃん?何か心当たりある?」
心当たりが全くないわけではない。
だけれど…もしかしたらそれは
慧兒なんじゃないかって
心の何処かで思ってた。
証拠なんてない。
場所だって教えてない…
「あ、いえ…嫌ですねそういうの…」
私は慧兒のことを何も言わず適当に誤魔化した。