彼は私を狂愛した。
「取りあえず…本当に返さなくていいから…はい」
私は震える手を抑えながら慧兒に3万円を手渡した。
「…サンキュー」
慧兒はこれ以上何も聞かなかった。
そして私が手に持っていた3万円を迷わず取った。
「…それじゃ、私…」
仕事に戻ろうと慧兒に別れを告げると
「ちょっと待ってよ」
そう言われて止められた。
__ドクン
嫌な予感がする。
「魅音さ、メアド教えてよ?新しくしたでしょ?携帯」
え…なんで…?
意味分からないよ…
「な…んで…」
震える声で尋ねると慧兒が少しだけ口角を上げ笑った。
「すぐ連絡取れるように」
何言って…
慧兒と連絡なんて取る必要ないよ…
きっとまたお金を狭まれるに違いない。
「…や…でも…」
「…は?いーじゃん」
グイッ
「きゃっ…」
慧兒に手を掴まれ抱きしめられた。
「ちょ…やめ…」
そして慧兒はゴソゴソと私の鞄から携帯を探し出す。
「あ、あった」
慧兒は嬉しそうに私の携帯に電源を入れてメールや電話帳を見る。
「ちょっと…やめてよ!」
必死になって慧兒から携帯を奪おうとするけど無駄な抵抗だった。
「…魅音、彼氏いるんだ?」
ドクン__……
あ…やっ…
怖い…
キーン!
耳鳴りがする。
とても大きな音で。
「ごめんなさっごめんなさい…!」
私は慧兒に謝っていた。
「なんで謝るの?魅音は悪くないじゃん」