百瀬君の生態記録。
「い、いま馬鹿って...」
「だって馬鹿でしょ」
そういって私の頭を雑に撫でると、細い掌をひらひらさせた。
振り返り際ににやり。不敵な笑みを浮かべた。
「じゃーね、望月さん。またあした」
百瀬君はそう言い残すと、最終下校時刻を告げるチャイムとともに薄暗い教室を後にした。
「...馬鹿はそっちでしょ、馬鹿」
今や独り言になってしまったその独白に、虚しさを感じながらも「ばーか」と言った百瀬君がちょっと可愛かったなんて、思ってしまった。
ほんと、調子くるう。
「帰ろう...」
明日あいつに会ったときは、馬鹿って言い返してやる。
そう意思を固めて今度こそとスクールバックを手にすると教室を出た。
―――百瀬君は案外サドスティックで、なんだかちょっと...可愛かったりもする...かも。