沖田総司は恋をする
肩を落とす僕に。

「でも!」

奈津美さんは言った。

「沖田さんの時代…今では幕末と呼んでいますけど…あの時代の人は、みんな日本の事を本当に心配して…みんな日本をよくしようと思って、その結果戦争になったと聞いています。たとえその戦争に負けたとしても、みんな日本をよくしたくて戦ったんですよね?」

「…その通りです」

僕は頷いた。

…百人いれば百の正義がある。

それが僕の時代。この時代で言う幕末だ。

私利私欲で動いている者もいるかもしれない。

しかし、戦に身を投じた者の殆どが、日本を憂い、救おうとして剣をとった憂国の士だ。

「私は…新撰組の人達は…沖田さんは胸を張っていいと思います!」

真剣な、奈津美さんの表情。

「……」

僕は微笑んだ。

「有難うございます、奈津美さん…優しいんですね」

「え…い、いえ…」

奈津美さんは頬を赤らめ、俯いた。

…この時代の女性は、随分とはしたないのだと思っていたが。

「前言を撤回させてください…この時代にも、奈津美さんのような奥ゆかしい方がおられるのですね」

「お、お、奥ゆかしいだなんて、そんなっ!」

奈津美さんは慌てたように言った。

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