沖田総司は恋をする
奈津美さんは鏡の中の僕をまじまじと見る。

「…沖田さんは、この時代では美剣士だって言われているんですよ?」

「び、美剣士!?」

そんな事、一体誰が言い出したんだ!?

あまりの恥ずかしさに、顔が熱くなる。

「でも…」

奈津美さんは柔らかく微笑んだ。

「本当…私もそう思います」

「え…」

僕は奈津美さんの顔を見る。

「…すごく素敵な人で、ハンサムで…刀を握って、斬り合いをするような人には見えません。優しい、虫も殺せないような感じです」

「……」

その言葉が嬉しい反面、少し後ろめたい気分になった。

奈津美さんは知らないのだ、本当の僕を。

本当の僕は、そんな菩薩のような人間じゃない。

新撰組の隊士として、既に多くの志士を斬ってきた。

『新撰組、鬼の一番隊組長』、『人斬り沖田』などと呼ばれた僕の手は、既に多くの返り血を浴びて…。

そんな事を考えていた僕の心中を察したのだろうか。

「さ、沖田さん!」

奈津美さんは僕の手を引いた。

「着替えも終わりましたし、早速出掛けましょうか!」

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