沖田総司は恋をする
草履ではなく『すにぃかぁ』を準備してもらい、それを履いて僕は奈津美さんと共に街へと出た。

「……」

既にその時点で驚きを禁じえない。

行き交う人々はみな洋装。

中には、顔立ちは日本人なのに、異人のように金色や茶色の髪の者もいる。

耳や鼻に金属の輪っかをつけている者…あれは装飾品なのだろうか。

「あれはピアスというんです」

腕に刺青を彫っている。あの若さで博徒か…?

「あれはシールタトゥですよ。ホントの刺青じゃないんです」

奈津美さんが丁寧に一つ一つ説明してくれる。

「……」

僕は眉を潜めた。

何にしても、軽々しく親からもらった体に傷をつけるとは…。

この時代の若者は、どこか軽薄な印象を受けた。

男は女に簡単に声をかけ、誠実さの欠片もない会話を交わし。

その女にしても、慎ましさというものが感じられない。

僕の時代の、奥ゆかしい大和撫子とは随分違う。

これも、西洋化の影響なのだろうか。

…明治という時代になって以降、『文明開化』というものが起こり、日本は生活様式や文化まで大きく変わったというが…。

僕にはそれが、良い事のようには思えなかった。

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