沖田総司は恋をする
「少し疲れたでしょう?休みましょうか。そこのベンチに座りましょう」

奈津美さんは、海の見える場所にある長椅子に僕をすすめた。

…僕と奈津美さんは、並んで座る。

「どうですか?沖田さん。この時代は」

「……」

僕は返答に悩む。

正直、受け入れ難い世界だった。

そりゃあ、様々な文明品に溢れ、僕らの時代よりは格段に便利になったのかもしれない。

豊かになり、不自由もなく、楽に暮らせるようになったのかもしれない。

しかし…。

「……」

僕の胸中を察したのか、奈津美さんは隣で苦笑いした。

「沖田さん達が命懸けで戦った結果がこんな世界じゃ…納得いかないかもしれませんね」

「い、いえっ、そんな事は…」

「でもね」

奈津美さんは続ける。

「沖田さんが守ろうとしていた幕府は滅んでしまったかもしれないけれど、その後の日本は、決して西洋に支配されてしまった訳じゃないんです」

奈津美さんは僕の顔を見て、穏やかに言う。

「日本は国際化の道を歩み始めたんです。海外の国を敵視せず、日本の文化だけに凝り固まらず、よその国とも手を取り合って、良い文化は取り入れ、逆によその国にも、日本にはこんな文化があるんだよって教えてあげて」

「……」

「そりゃあ、今の時代にも戦争はあります。いい文化ばかりが入ってくる訳じゃないし、悲しい事件もたくさんあります。でも」

奈津美さんは僕を見て、にっこりと笑った。

「この時代の人達だって、この国を心配して、この国をより良くしていこうって考えている人もいるんです。沖田さん達に、負けていないですよ?」

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