沖田総司は恋をする
外食というので、蕎麦屋のようなものを想像していたのだが。

「ふぁみれす、ですか…昼夜を問わず商いをしている食事処があるとは驚きです…」

僕は食事を終えて歩きながら言った。

「この時代では、24時間営業というのは珍しくないんですよ?」

へきるさんが笑う。

成程。

そういう言い方をするなら、昼夜を問わず京の街を奔走していた新撰組も、二十四時間営業、という奴なのかもしれない。





帰り道。

「あれ…へきるさん、あれってもしかして」

歩いていた奈津美さんが突然立ち止まり、何かを指差した。

…空に上がる黒煙。

「…火事!?」

へきるさんの声で、僕達は煙の方角へと走っていった。

そこで目撃したのは、まさに出火したばかりの建物だった。

「なんて事…マンションじゃない!」

へきるさんが言う。

その、まんしょん、という高い建物の五階あたりに、人影があるのを、僕は見逃さなかった。

「人!まだ人が残っています!」

「ええっ!?嘘!?どこ!?」

奈津美さんとへきるさんには、よく見えないらしい。

しかし、僕には確かに見えた。

五階の窓から助けを呼ぶように顔を覗かせる、幼い女の子の姿。


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