沖田総司は恋をする
狐につままれた気分だった。

…未来の…時代…?

「馬鹿な」

思わず笑ってしまう。

いくら童顔とはいえ、僕ももう元服をとうの昔に終えた21の男だ。

そのような小童(こわっぱ)に説いて聞かせるような御伽話で、騙される筈もない。

「そのような世迷言、聞いている暇はないのです。どうしてもというのなら」

僕は腰に帯びた刀の柄に手をかける。

「命までは奪いませんが…押し通らせて頂く」

「っ!!」

二人の女性は顔色を変えた。

しかし。

「信じてください!」

へきるさんは真剣な表情で叫ぶ。

「本当に、ここは貴方のいた時代ではないんです!」

「……」

嘘を言っている表情ではない。

「まさか…だって今は、元治元年(1864年)の六月六日…祇園祭の夜で…」

「……」

僕の言葉に、二人の女性はまたも表情を曇らせた。


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