沖田総司は恋をする
「危険な目に遭った…?」

僕の言葉は、奈津美さんの怒りに油を注いだようだった。

「一歩間違えれば死ぬところだったんですよ!?」

そう怒鳴る奈津美さんに。

「武士道とは死ぬ事と見つけたり、という言葉をご存知ですか?」

僕は静かに言った。

「僕は死ぬ事など恐れていません。新撰組の隊士は…いえ、僕の時代の侍達は皆そうでした。自分の命よりも大切な事がある。先程で言えば、あの女の子の命を救う事の方がずっと大事です」

それは、奈津美さんを納得させるに足る言葉だと思った。

しかし。

「武士道なんて関係ありません」

奈津美さんは僕の言葉を一蹴した。

「死を恐れていないとか、命よりも大切な事があるとか、それがカッコいいつもりですか?」

「…奈津美さん」

彼女の言葉には、正直苛立ちを覚えた。

だが。

「自分の命を大切にしない人に、どうして他人の命の重さがわかるんですか!!」

「…!!」

その奈津美さんの言葉に、衝撃を覚える。

これまで何十、何百もの人間を斬ってきた僕には、胸に突き刺さるような言葉だった。


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