沖田総司は恋をする
しばらくして戻ってきた奈津美さんは、いつもと違う洋装に身を包んでいた。

薄桃色の、まるで桜の花びらのような色の…ひらひらしたような服。

洋装には詳しくないので、何という名称の服なのかはわからないが…奈津美さんの雰囲気にはとても合っていた。

「よくお似合いですよ、奈津美さん」

僕が言うと。

「あら…沖田さんでもお世辞言うんですね」

奈津美さんはクスッと笑った。

「とんでもない!武士は偽りなど口にしません!今のは心からの…」

と言いかけて、とても恥ずかしい事を言葉にしている事に気づく。

途中で小声になってしまうと。

「…その言葉を聞いて安心しました」

奈津美さんははにかんだ。

その表情がとても綺麗で…。

着ている服のせいもあるのだろうか。

可憐な花のように思えた。

「さぁ、出掛けましょうか。沖田さん」

奈津美さんと共に、僕は歩き出す。

と。

「ごほっ…」

僕は突然、むせるように咳をした。

「…沖田さん?」

「失礼」

僕はすぐに奈津美さんの方を見て笑う。

「風邪ですか?」

「いえ、そういう訳ではないんですが…少しむせたかな…」









思えばこの時より、既に僕の運命は動き始めていたのかもしれない。





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