沖田総司は恋をする
街に出た僕は、奈津美さんの気の向くままに歩く。

「さてと…まずはどこに行こうかな…」

特に行き先は決めていないらしい。

にもかかわらず、奈津美さんはどこか楽しげだった。

「そうだ!沖田さん、この街の景色を高いところから見てみましょうか」

そう言って彼女が僕を連れて行ったのは、空に突き刺さらんばかりの高層の建物だった。

「このあたりでは一番高いビルです。60階まであるんですよ?」

「60階…」

それは昇るのが大変そうだ。

幾ら僕でも途中で休憩が必要かもしれない。

そんな事を言うと。

「あははははっ!」

奈津美さんは大笑いし始めた。

「な、何が可笑しいのです…」

「だ、だって…」

笑いすぎて浮かんだ涙を、奈津美さんは拭う。

「沖田さんたら、こんなビルを階段で昇るつもりだったんですか?」

「?」

階段以外に、何があるというのだろう。

不思議に思っていると、奈津美さんは不意に僕の手を引いた。

「とにかく入ってみましょう。すぐにわかりますよ」


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