沖田総司は恋をする
飽きる事無く、展望台からの景色を眺めていると。

「沖田さん」

しばらく僕の側を離れていた奈津美さんが戻ってきた。

両手には、何かおかしなものを持っている。

食べ物だろうか。

白い、渦巻状の柔らかそうな食べ物。

「ソフトクリームです。冷たくて美味しいですよ?」

「…氷菓子のようなものですか?」

奈津美さんの手から一つ受け取る。

一口、口に含むと、甘く冷たい感触が広がる。

カキ氷などとはまた違った食感だ。

「これは…美味しいですね…!」

「気に入っていただけましたか?」

奈津美さんは嬉しそうに笑った。

…しばらく、そふとくりぃむとやらを食べながら、奈津美さんと談笑する。

…新撰組の組長となった時から、このような時間を過ごす事はもうないだろうと思っていた。

友人と談笑したり、好きな物を食べたり、景色のいい場所を散歩したり。

そのような時間は過ごせないだろうと思っていた。

僕は京や幕府の治安を守る組織の一員なのだ。

その為には自分を押し殺す事も必要だ。

自分の手を汚す必要もある。

だが…こうして奈津美さんと穏やかな時間を過ごしているうちに、忘れてた感情が甦ってきていた。

こうして人並みの幸せを味わうのもいいものだなと、心の底から思っていた。

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