沖田総司は恋をする
さぁっ、と。

風が僕と奈津美さんの頬を撫でる。

「え…?」

聞き違いかと思い、僕は奈津美さんに問い返した。

「……」

さっきまで笑顔だった奈津美さんは、いつの間にか困惑の表情を浮かべていた。

「沖田さんは、ただの幕末の時代の人じゃない…歴史上、大きな役割を担う人…貴方が歴史から消える事で、もしかしたら大きく歴史が変わってしまうかもしれない。それ程に大きな意味を持っている人…でも」

奈津美さんは俯いた。

「わかっている上で言います。この時代に残る気はありませんか?私と、へきるさんと…この時代で、この時代の人間として、一生を過ごす気はありませんか?」

「…奈津美さん…?」

言っている意味はわかる。

だが、奈津美さんは分別のつかない、そんなわからない事を言う人ではない筈だ。

だからこそ、奈津美さんの言葉は意外だった。

「この時代には何でもありますよ?沖田さんの時代よりも優れたものばかりです。沖田さんが剣をとって、戦場に立つ必要もなくなります。それに…」

奈津美さんは苦しげに呟く。

「沖田さんの時代より…医療技術も発達していますし…」

なぜ、今この時に医療技術、なんて事を言うのか。

僕には理解できなかった。

「奈津美さん…お気持ちは嬉しいが、僕は新撰組の組長として、元の時代に帰らなければ…」

言いかける僕。

そんな僕に。








「貴方の事を好きになり始めてるから!!」




奈津美さんは叫んだ。

「それでは…理由にはなりませんか…?」


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