沖田総司は恋をする
ドクン、と。

心臓が、一つ大きく鳴った。

「……」

奈津美さんは、恥ずかしげに目を伏せる。

「み…身の程知らずな事はわかっています。ただの凡人の私が、歴史上の人物である貴方に、こんな感情を抱くなんて…おかしいですよね?笑ってくれて構いません。でも」

彼女は、切なげな瞳をこちらに向ける。

「私は…歴史の本の文章だけじゃない、本物の貴方を知ってしまいました。笑顔を浮かべて、優しい言葉を紡ぐ、生身の貴方を知ってしまいました。だから…私は貴方を助けたい」

「…助けたい…?」

奈津美さんの言葉に、僕は戸惑う。

その時だった。










「呑気なものだな。この時代にまで来て女に現を抜かすとは」









場違いな男の声が、空気を一変させた。



















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