沖田総司は恋をする
結核。

わかりやすく言えば肺の病だ。

僕らの時代では『労咳(ろうがい)』と呼んでいた。

幕末では不治の病であり、一度かかれば最後、患者を隔離し、安静にしておく程度しかできなかった死病。

「沖田さん…よく聞いてください」

へきるさんはゆっくりと言う。

「この時代の歴史に残っている貴方の最期は…貴方は労咳にかかり、戦線を離脱、そのまま二度と新撰組に合流する事無く、二十代半ばにして命を落とします…」

「……!!」

絶句した。

…近藤さんや土方さんと共に、最後まで肩を並べて戦えると信じていた。

生き延びられないまでも、最期まで剣に生き、侍としての本懐を果たせるものだと信じていた。

そういう死に方ができるのならば、新撰組一番隊組長として戦死できるのならば、本望だと思っていた。

なのに…。

僕は膝から崩れ落ちる。

「…何という事だ…」

無念さに歯噛みし、堪えきれずに涙をこぼした。

「運命は…僕に侍として死ぬ事すら許してはくれぬというのか…!!」


< 64 / 90 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop