沖田総司は恋をする
僕は気持ちを切り替える。

自分が病で倒れる事。

侍として本懐を遂げられない事。

そんな事は全て、事が終わった後で考えればいい。

今は奈津美さんを救う事の方が先決だった。

もし、僕の命が幾ばくもないというのならばそれでもいい。

奈津美さんを無事に助け出せるまで…どうか僕の体よ、僕を裏切らないでくれ…。






     ◆◆◆◆◆



出会った時から思っていた。

沖田さんはどこか、自分をないがしろにしている部分がある。

それは、あの火事に遭遇した時に決定的になった。

彼は「自分を犠牲にして女の子を助けた訳ではない。どちらも助かる自信があるからこそやったんだ」なんて言っていたけど。

それはきっと違う。

彼はいざとなれば、簡単に自分の命を投げ出す人だろう。

武士道とは死ぬ事と見つけたり。

沖田さんが口にした言葉。

それが彼の本心を物語っている。

彼は、死を美徳と思っているような節がある。

…沖田さんから預かっていた新撰組の羽織と、刀を手にする。

この羽織に袖を通す事は、それ程の決意を必要とするものなのか。

それとも沖田さんは、奈津美ちゃんの命がかかっているからこそ、あそこまでの悲壮な決意をすることが出来たのか…。


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