沖田総司は恋をする
僅か、ほんの僅かだけ、集中力を乱した沖田さんの反応が遅れる。

その僅か分だけが、命取りとなった。

吉田の振るった剣が、隙の生じた沖田さんの胸板を横薙ぎに斬る!

「がっ…!」

うめき声と共に、沖田さんが体をくの字に曲げ、そのまま崩れるように尻餅をついた。

「お…」

目の前で、ゆっくりと倒れていく沖田さんの姿。

それを目の当たりにして、すぐに声が出せなかった。

「沖田さんっっっ!!!!」

悲鳴に近い声で、私は叫ぶ。

…もう駄目だと思った。

あんな弱りきった体で、刀で斬りつけられて…。

いくら沖田さんが強いといっても、肉体そのものが常人より強靭な訳ではない。

しかし。

「ちっ…踏み込みが足りなかったか…」

吉田が苛立たしげに言う。

それとほぼ同時に。

「う…く…!!」

さっき倒れたばかりの沖田さんが、ゆっくりと体を起こし始めた。

…一流の侍としての、修羅場を潜り抜けてきた経験だろうか。

沖田さんは斬られる瞬間、反射的に身を引いていた。

そのお陰で、僅かな踏み込み分、深く斬られずに済んだのだ。

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