沖田総司は恋をする
緊張していた両者の間の空気が、更にピンと張り詰める。

対峙する二人以外、動く事すら許さぬとばかりに、殺気に包まれた空気の中。

「…新撰組一番隊組長沖田総司、参る!!」

沖田さんは自分から仕掛けに行った!!

強靭な脚力を利した一足飛びによって、一気に吉田の間合いを侵略。

同時に、両手で握った刀の切っ先を、渾身の力を込めて繰り出す!!

裂帛の気合を込めた突き!!

当たれば確実に相手を死に至らしめるであろうその技は。

「!!!!」

吉田の、常人離れした反射神経によってかわされてしまっていた。

…突きは一撃必殺ではあるものの、かわされれば隙だらけの諸刃の剣。

避けられれば最後、反撃を受け、待つのは己の死のみ。

例外なく、突きをかわされた沖田さんの辿る運命も、死という敗北。







その筈だった。





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