沖田総司は恋をする
部屋に通され、しばし休んでいると、再び奈津美さんがやってきた。

「食事を持ってきました。お口に合えばいいんですけど…」

持ってきてくれたのは、白飯、味噌汁、焼き魚にお浸し。

素朴ながらも上品な味付けの料理だった。

「美味しいですか…?」

恐る恐る尋ねてくる奈津美さん。

「はい」

僕は笑顔を浮かべて頷く。

「奈津美さんが作ったのですか?とても美味しいです。味付けも、どこか京で食べていたものに似ていて…」

「そうですか、よかった」

そう言って奈津美さんは、可憐な笑顔を浮かべていた。




食事の後、お茶を淹れてもらい、少し会話に興じる。

「沖田さんは…本当に新撰組の隊長さんなんですか?」

「隊長ではなく組長ですね。一応一番隊を近藤さんより任されています」

「近藤さん?」

「新撰組の近藤勇局長です。ご存知ありませんか?」

「名前程度なら学生の頃、歴史の授業で…」

「……」

奈津美さんの話を聞いて思う。

この時代では、僕のいた時代は既に過去の歴史なのだ。



< 8 / 90 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop