沖田総司は恋をする
どうしても気になり、僕は奈津美さんに尋ねる。

「奈津美さんは…僕らの時代の事をご存知なのですか?」

「え…」

僕の質問に、彼女は困惑の表情を浮かべた。

「ご存知ならば、教えては頂けないでしょうか…黒船が来てからの日本は、維新志士と幕府に分かれ、長い間動乱の時代が続いています…我々新撰組は、幕府の存続の為に、倒幕派の志士を狩る日々を送っている…」

僕は真剣に奈津美さんを見つめた。

「その後…幕府はどうなったのです?この動乱は…日本はどちらに傾いて…」

そこまで言って、僕はハッとした。

…さっき見た、この時代の街の風景。

異人のような格好をした街の人々。

奈津美さんやへきるさんの洋装…。

僕や新撰組、幕府が恐れていた、西欧列強の波に似ている…。

「…奈津美さん、正直に答えてください」

僕は俯き加減に言った。

「幕府は…江戸幕府は敗れたのですね…?」

「………はい」

苦しそうな表情で、奈津美さんは頷いた。

「私の知っている限りでは…幕府は維新志士に敗れ、その後政府が設立され、幕府は終わり…明治という元号になりました」

「……」

そうか…幕府は…新撰組は負けたのか…。


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