あたしのトナカイくん
うさぎとトナカイ
「まま見てー! かわいいうさぎさん!」
「あらほんと、かわいいねぇ」
もうすぐバレンタインデーということで、どことなく浮き足立った街。
目の前を通りかかろうとした親子が、そんな会話をしながら立ち止まった。
あたしはにっこり笑って、こちらをキラキラした目で見上げてくる女の子に手を振る。
……いや、あたしの『にっこり』は、この女の子には見えていないんだけど。
今のあたしは、そう──例のごとくバイト先であるカラオケ店の客引きのため、プリティなうさぎの着ぐるみを身につけているからだ。
ていうか、あ、頭、意外に重たいな……。
「まま、みーちゃんうさぎさんほしい! うさぎさん、うちに来てよーっ」
「こらこら、みーちゃん」
女の子はちっちゃい手であたし(うさぎ)の手を掴んで、必死に引っぱっている。
かわいいなあ、だけどどうやってやり過ごそうかなあ、なんて考えていると。
それまで黙っていたあたしの隣りの人物が、女の子の目の前にしゃがみこんで、にこりと微笑んだ。
「あらほんと、かわいいねぇ」
もうすぐバレンタインデーということで、どことなく浮き足立った街。
目の前を通りかかろうとした親子が、そんな会話をしながら立ち止まった。
あたしはにっこり笑って、こちらをキラキラした目で見上げてくる女の子に手を振る。
……いや、あたしの『にっこり』は、この女の子には見えていないんだけど。
今のあたしは、そう──例のごとくバイト先であるカラオケ店の客引きのため、プリティなうさぎの着ぐるみを身につけているからだ。
ていうか、あ、頭、意外に重たいな……。
「まま、みーちゃんうさぎさんほしい! うさぎさん、うちに来てよーっ」
「こらこら、みーちゃん」
女の子はちっちゃい手であたし(うさぎ)の手を掴んで、必死に引っぱっている。
かわいいなあ、だけどどうやってやり過ごそうかなあ、なんて考えていると。
それまで黙っていたあたしの隣りの人物が、女の子の目の前にしゃがみこんで、にこりと微笑んだ。
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