あたしのトナカイくん
「店長が、今日はこのまま帰っていいって。家の人、迎えに来れる?」

「あ、大丈夫、だと思う……メール、してみる」

「うん」



横になったままスマホを操作するあたしの横で、戸波くんは事務椅子に座っている。

メールが送信されたのを確認してから、あたしはおずおずと、口を開いた。



「あの、戸波くん……あたしのことはいいから、仕事に戻った方が、」

「俺は休憩時間。店長にも、迎えくるまで付いててやれって言われてるし」

「えっ、い、いいよ! 風邪移っちゃうかもだし、戸波くんは、休憩室に……っ」

「……あのさー」



なんだか少し呆れたような声が降ってきて、あたしは口をつぐんで彼を見上げた。

予想通り呆れたように、だけど彼は、少しだけ笑みを浮かべていて。



「わっかんないかなぁ。自分のすきな人が具合悪そうにしてたら、そばに付いててやりたいって、思うもんじゃないかね」

「……ッ、」

「あーあ。ほっぺ、真っ赤」



言いながら、戸波くんの手が、あたしの頬に触れた。

ドキン、ドキン。熱のせいだけじゃなくて、鼓動が、速くなる。
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