あたしのトナカイくん
おそるおそる、あたしは頬に触れている彼の手に、自分のそれを重ねて。

思わず笑みをもらしながら、戸波くんの顔を、見上げた。



「ふふっ。戸波くんの手、冷たくて、気持ちいい」

「……ッ、」

「戸波くん、気付いてくれて、ありがとう。……あと、付いててくれて、ありが──」



その先の言葉は、言えなかった。

戸波くんが、あたしの頬に触れていない方の手を、ソファーの背もたれについて──真上から、まるで覆いかぶさるように、あたしのことを見下ろしたから。



「え、と、となみく……」

「……それは、反則だろ」

「え……」



さらり。彼の右手が、あたしの前髪を梳いた。

目を逸らせないままのあたしを見下ろしながら、少しだけ苦しそうに、戸波くんが眉を寄せる。



「あんまり、無防備にしてると……トナカイだって噛みつくこと、あるからな」

「ッ、と……っ」



前髪を流していた手が降りてきて、あたしの耳の後ろに触れた。

また一際大きく、心臓が高鳴って。ゆっくり、彼の顔が近付いてくる。
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