【完】恋の太陽、愛の月
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「咲夜こんな時間に帰るくらいだったらうちに泊まっていきなよ!」
「いや、いいよ。雪もやんでるし」
「そういう問題じゃないじゃん!!」
「明日は朝から教え子の試験があるんだよ。俺が車で連れてってやるって約束してるんだ」
「んー・・・それじゃあしょうがないか。あ、でもせめて何か羽織って帰って?またうち来た時返してくれればいいから。えーっと・・・これこれ!」
「ひなた。いいのか?これ。お前のおじさんの大事な・・・」
「多分大丈夫だよ!」
「・・・何してるの!!!!!」
「わっお母さん!・・・あっちょっと!」
「これをどうする気だったの?」
「え・・・。咲夜に貸そうと思って」
「ひなた。よく聞いてちょうだい。このコートは私にとってかけがえのないあの人のものなの。いくらさーくんでも貸す事はできないわ」
「でも・・・」
「さーくん。今日は暗いし、泊まっていきなさい」
「いや、でも俺」
「いいから」
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あの時のおばさんの顔は真剣そのもので。
俺は黙って頷くしかなかった。
次の日は結局おばさんの車を借りて、教え子を試験会場まで送って行った。