【完】恋の太陽、愛の月
話を逸らすかのように咲夜は問いかけてきた。
「・・・あー。そ、それ。病院から出る時もらってた封筒。中身、見たのか?」
落としたメガネを拾いかけ直す。
問いかけられた私はというと、目線を落として持っていた封筒を見つめる。
「ううん、見てないよ」
何度か開けようか迷った。
でもやっぱり封を開ける勇気はない。
「俺が見舞いに行った時も頑張って書いてたよ。お前への手紙」
「・・・」
「体辛いのに起きてさ。相当利き手も言う事聞いてなかった。でも必死に自分の字で書こうとしてた」
「・・・っ」
「すぐに読めとは俺も言えない。・・・でも、絶対読んでやってな?おばさんからのひなたへの思いがつまった手紙をさ」
咲夜の言葉には説得力があった。
だから、私の考えは一気に塗り替えられた。
封を開けることでお母さんが本当にいなくなってしまう。
・・・そんなわけない。
封を開ければお母さんがずっと私の心の中で生きていてくれる。
そんな風に思えた。
「・・・読む。今から」
「・・・おう」
「その代わり、ちょっとだけ隣にいてほしい」
「分かった」
私と咲夜はお母さんが寝ている傍に座った。