【完】恋の太陽、愛の月
さーくんはここ最近私の所にお見舞いに来てくれるわ。
ひなたのフラワーアレンジを持って。
毎回持ってきてくれたときにこう言ってくれるの。
「今日もひなたからの差し入れです。代わりに持ってきました」って。
・・・本当にそうだった?
私にはそう思えなかった。
ひなたはお店で忙しいのに、私に花をつくる余裕なんてないって分かってたから。
さーくんは私の所にいる間ずっとひなたの話をしてくれた。
すっごく優しい顔で。
「ひなたが」、「ひなたは」、「ひなたの」
言葉の最初には必ずひなたの名前がついた。
でも、そのおかげで私は全然寂しくなかった。
まるでひなたが傍にいるような気がして。
・・・前に、たーくんに貸したお父さんのコートあったよね?
あれ、昔さーくんにも貸そうとしてたこと覚えてる?
私が猛反対したの。
どうしてか、今教えてあげる。
小さな頃からさーくんはひなたを好きでいた。
目に見えて分かったことなの。
お父さんがまだ生きている頃、お父さんもそう言っていた。
「咲夜はませてるから俺の娘に手を出しかねない」ってね。