【完】恋の太陽、愛の月
【太陽side】


………

……







泣き叫ぶ母さん。


どんよりした空気。





今自分の目の前で起こっている出来事が、現実には思えなかった。




「父さんが死んだ?」


あの父さんが死ぬわけがない。


でも何度見ても白い布の下には父さんがいた。






「あなたぁあああ」



これはひなとの電話のあとのことだった。




**



「もしもし!今、東京着いたよ!これから父さんのとこ行ってみるんだ」


『あ、本当?お疲れ様!分かった!!』


「ひなは今何してるの?まだお店?」


『ううん!お店はさっき閉めて、お母さんのところ行ってるの』


「じゃあひなも病院向かってるんだ?場所は違うけど向かう場所が一緒なのは嬉しいな」


『私も!・・・太陽君がいるの当たり前になってて、今一緒にいないから少し寂しくて』


「ふふ。可愛いなぁひな。帰ったらぎゅーってしてあげるね」


『・・・うん!』


「あ、僕もう着きそうだ。父さんが入院してる病院駅から近いんだよね。じゃあまた後で電話するよ!」


『はぁい。またあとでね!』


**




僕は結局この時した、ひなとの約束を守る事はできなかった。



父さんが死んだこの日から僕は父さんの会社の社長代理をすることになったからだ。
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