【完】恋の太陽、愛の月
朝比奈財閥。
これだけのために父さんは生きてきたと言っても過言ではないはず。
家族との時間なんて投げ捨てて、会社を第一に考えてきた父さん。
その父さんが死んでしまった今は僕しかその意思を継ぐ者がいない。
母さんは父さんが死んでしまってから別人のように変わってしまった。
うわごとのように父さんの名前を呼び、機械のように使用人が作ったご飯を食べる。
まるで魂の抜かれた人形のよう。
・・・父さんは父さんで次期社長を僕以外に見つけられなかったようで、秘書の丸岡さんは困り果てていた。
丸岡さんには今まで世話になってきたこともあるし、あんな状態の母さんを一人にしてひなや咲夜たちがいる所に帰れる気にはなれなかった。
だから僕が社長代理として会社を守ることにしたんだ。
これは父さんのためじゃない。
ただの人助けだ。
でも会社の仕事はあり得ないくらい忙しかった。
朝から夜まで書類とにらめっこ。
会議や他社にもいかなければならない。
僕の一日は会社で始まり会社で終わる。
そんな日々が続いた。
少し休憩ができると聞いた瞬間、すぐにひなに連絡をいれようと思った。
でもいれようとした瞬間に緊急の仕事。
タイミングを逃してばかりだった。
連絡をすると約束したのに。