【完】恋の太陽、愛の月
他の生徒と同じ待遇。
いや、それ以上に俺は染谷を避けていた。
歳が近いとはいっても塾の先生と生徒の関係。
決して恋の道に行っていいわけではない。
学習に対しては熱心に教えても、絶対にプライベートの俺を見せることはなかった。
でも何故か俺は今日、自分から染谷に話しかけた。
染谷が俺に会いに来ただけということを分かっていながら。
「そうか」
「先生今日気分がいいの?私の相手してくれるなんて!」
「・・・そういうわけじゃないよ」
俺はふっと笑って染谷の頭をぽんぽんと撫でた。
「もう帰れ。俺これから授業だから」
「えー」
「今日はたまたま相手してやっただけだから。あんま期待するなよ」
「私・・・まだ告白もしてないんだけど?」
「それ言ってる時点で告白だから。じゃあな。気をつけろよ」
「ふーんだ!」
拗ねた真似をしながらも、笑顔で手を振り「またね先生♪」と言って去っていった。
寂しくて冷たい心が少しだけ温まったそんな気がする。