【完】恋の太陽、愛の月
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「先生さようなら!」
「さよーなら!」
授業が終わり、生徒たちが帰っていく。
俺も今日の授業はもうない。
だから生徒たちに混じって塾を出ようとした。
「せーんせ♪」
「・・・染谷?」
「うん!」
「うん!じゃなくて。帰れって言っただろ」
「先生この授業で終わりだと思って待ってたの!」
よく見ると染谷は手袋も耳あてもしていない。
唯一の防寒対策と言っていいのはコートだけだろう。
俺はむき出しの染谷の両手を握ってみた。
「ほら、冷たい」
「・・・せ、せんせ」
「何ときめいてるんだよ。ばーか」
「もうっ!雰囲気台無し!!」
「ははっ。・・・しょうがないな。歩きだけど家まで送ってやるよ」
「本当!?ありがとう!!」
何故だろう。
あまり関わったことないはずなのに、俺はすっと染谷と馴染んでいる。
・・・ああ。
そうか。
染谷は少しだけ・・・ひなたに似ている。
本当に少し。
目のあたりと、雰囲気が。
だからあえて避けたような行動をとってしまったりしていたのだろうか、俺は。