【完】恋の太陽、愛の月
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「咲夜できたよ」
私は言われたとおりに咲夜を呼びに来た。
「グルルルッ」
「分かった分かった!!降参だよタロー。ジャーキーで釣ろうとしたけどそれも駄目か」
目の前で繰り広げられていたのはいつもの光景。
ミニチュアダックスフンドのタローは私が中学校の入学祝いに飼ってもらった子。
お父さんからの最後のプレゼントでもある。
会った時から私にはすぐ懐いてくれてとても嬉しかった事を覚えている。
でも咲夜にタローを自慢しようと家に呼んだ時、何故か問答無用でタローは咲夜に襲いかかった。
それ以来咲夜は私の家に来るたびにタローに少しでも懐いてもらおうと頑張っている。
「ふふっ。相変わらずだなぁ」
私の姿を見た途端タローは勢いよく私に飛びついて来た。
「よしよし」
「俺にはそんな風に触らしてくれた事ないのによ。・・・どんだけ俺のこと嫌いなんだよ」
ぶつぶつ言いながら咲夜は店の方に戻っていく。
私もタローをもう一回撫でてから、慌てて咲夜のあとをついていった。