【完】恋の太陽、愛の月
「じゃあ俺こいつを送ってくから」
染谷の手をがしっと掴み、二人を通り過ぎる。
「あ・・・咲夜」
通りすがりにひなたに名前を呼ばれた気がした。
でも俺はそれを無視する。
その代わりに掴んだ染谷の手を思い切り握りしめていた。
何かに我慢するように。
それから二人の姿が見えなくなり、俺は自然に染谷の手を離した。
「悪かった」
「・・・あ、えと」
「こんな嘘、すぐばれるとは思う。・・・馬鹿だよな俺」
「ねぇ先生」
「ん?」
「あの・・・。さっきの女の人のこと・・・好き、なの?」
胸を槍で一突きされたような感じがした。
だから何も言えなかった。
『嘘をついた理由は、片想いの女の子と大切な親友が恋人になって俺の目の前にいたから』
本当の事なんて言えるはずもない。
染谷を太陽へのあてつけだと言いたくなかった。
「私、あの人の代わりでもいい」
「・・・何言ってるんだよ」
「今ちゃんと言わせて。私先生の事が好き」
突然の告白だった。