【完】恋の太陽、愛の月
「僕が呼ぶからひなは傍にいてあげて」
太陽君が急いで救急車を呼ぶ。
電話をかける手つきは冷静で、電話の対応も冷静だった。
こんな時。
私が一人だったらどうなっていたんだろう。
そう思うと怖くてしょうがなかった。
「ひな。救急車呼んだからもう大丈夫。あとは少しでも応急処置をしよう。・・・確か元々体が弱いんだよね?ひなのお母さん」
「うん・・・。昔から心臓が悪くて、薬とかもかかさずに飲んでる。・・・あ!薬!?」
持病の心臓病を持っているお母さん。
ニトロという薬を肌身離さずに持っている事を私は思い出した。
胸が苦しくなったらその薬を飲めばおさまる。
小さい頃にそう聞いた気がする。
私は慌ててお母さんの服のポケットから薬の入った瓶を取り出した。
「からっぽ・・・!?」
「それが理由かな。とりあえず意識はないんだよね?・・・じゃあ呼吸の確認して、少しでも呼吸がしやすい状態にしなきゃいけない」
「・・・うん!」
太陽君はテキパキと応急処置をしてくれた。
なんとかお母さんは息をしているようで、私は安心した。
こういう処置の仕方・・・全然分かってなかった。
すごく自分が情けない。
無事救急車も来て、私は一緒に乗った。
太陽君は私の自転車を借りてそれで病院まで来てくれるらしい。
「じゃあまたあとでね」
にっこりほほ笑む太陽君。
私もほほ笑み返した。