【完】恋の太陽、愛の月


………

……











病院に着きロビーに座って待っていると、太陽君が頭に雪を乗せてやってきた。


「・・・太陽君!」


「急に雪降ってきてさ。天気予報嘘つきだよね。ここ一週間は晴れるって言ってたはずなのに笑」


雪を払いながら太陽君はそう言った。


一人で待っている間すごく辛かった。
病院の中。
薬品の香り。

お母さんがこのままどうにかなっちゃうんじゃないかという恐怖。


たった少しの間待っているだけだったのに、私は不安でしかたなかった。


でもそんな気持ちが雪のように溶けていく感じがした。



やっぱり、太陽君は太陽なんだなぁ。




「どうしたの?ひな」


「ううん。なんでもない」


「そう?」


「うん!!」




私は無意識のうちに笑っていたらしく、太陽君に不思議がられた。


でもすぐに太陽君は私の隣に座り、手をぎゅっと握ってくれた。

その手はとても温かくて心から安心できた。




「三井さん。よろしいですか?」


そんな時、お母さんを担当している医者の人が出てきて私に声をかけてきた。


「あ、はい」


呼ばれるまま私は診察室に入っていく。

もちろん太陽君も。


いつもは風邪の時しか入らない部屋の中。

なんだか不思議な感じがした。
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