【完】恋の太陽、愛の月
ひなたも笑顔で染谷のことを見つめて「彼女さん・・・?」だって。
笑えてきてしまう。
・・・辛すぎて。
「今日はどうしたの?」
「・・・どうしたの、って。俺は」
お前の母親が倒れたってメールきたから来たんだよ。
心配だったんだ。
そんな言葉が口から出ない。
普通に言えばいいはずなのに。
「私が!幼馴染さんの、お店に行ってみたいって言ったんです」
ふいに染谷が口を開いた。
俺は掴んでいた手首をぎゅっと握って嘘を止めようとした。
でも、すでにひなたたちには伝わってしまっていた。
ひなたはパタパタとこっちにやってきて、にっこりとほほ笑んだ。
「そうだったんだ。嬉しい!!ちょっと待っててね」
そう言ったと思うとすぐに奥に入っていってしまった。
「仲、いいんだね」
三人残された空間で、沈黙を破ったのは太陽だった。
俺と染谷の手を見てそう言ったのだ。
「・・・別に」
ふっと染谷の手首を離す。
悲しそうな、寂しそうな顔で染谷は俺を見ていた。
「お待たせー!!」
そんな空気を壊しながらひなたが奥から戻ってきた。
手には押し花らしきものが握られている。
「見たところ大学生くらいだよね?よかったらこれしおりに使って!!」
「へっ!?」
「これはスミレの押し花なの。誠実、小さな幸せとか意味があるんだ。二人が誠実な愛を育んで小さなことでも笑い合える。そんな些細な幸せが送れますようにって思いながら作ったの。受け取ってもらえるかな?」