【完】恋の太陽、愛の月
店から少し離れた場所で、俺は染谷を問い詰める。
「染谷お前何考えてるんだ」
「どう?私の演技うまかった?♪」
「話をそらすな」
「だって、なんかあまりにもひなたって人が・・・その」
「ひなたがなんだ」
「先生の気持ちも知らずに私にこんなもの渡すから」
染谷は手に持っていたスミレの押し花を見つめた。
俺はその押し花を手にとる。
「それとグループデートとどう関係あるんだよ」
「私と先生の仲いい姿見せて、ちょっとでもあの人の心が動かないかなって・・・思ったの」
「馬鹿だなぁ。動くわけないだろ」
「分からないじゃん!!」
「俺には分かる」
「私には分からない。どうしてそんなに普通でいられるの?太陽さんも幼馴染だったんでしょ?好きだった人と友達が一緒にいて辛くないの?」
「辛いよ。辛くなかったら染谷を彼女だなんて嘘つかないよ」
染谷は何かを言い返そうとしていたが、すぐにうつむいた。
「勝手な事してごめんなさい。グループデートとか訳わかんない事も言っちゃって。二人に謝ってなしにしてきてもらう」
「・・・染谷」
「ごめんなさい」
「はぁ・・・。なしになんかしなくていいよ」
「え!?」
「行こう。グループデート」
「どうして・・・」
「さあな」
染谷の気持ちが嬉しかった。
きっとひなたの心は動く事はないだろうけど、気持ちを無駄にはしたくなかった。
染谷は俺を好いてくれている。
そんな子を俺は利用しているんだ。
償いとして、少しでも思い出くらい残してやりたい。
それもOKした理由の一つだった。