【完】恋の太陽、愛の月
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「わぁ・・・!!懐かしい!」
「ひな車から降りるの早いよ」
「ご、ごめん!つい!」
数時間かけて隣町の遊園地に着いた僕ら。
車の中はここに着くまで一向に空気が軽くなることはなかった。
でも、ここに着いた瞬間にひなが満面の笑みを見せた。
だから僕自身の心も穏やかになったし、心なしか咲夜も微笑んでいる気がする。
もちろんあの助手席の子は黙って咲夜の傍に立っているだけだけど。
「新しい乗り物増えたんだってよ。ほら、パンフ」
「ありがと咲夜!楓ちゃん、一緒に見よ?」
「あ、は・・・はい」
「そんな敬語使わなくてもいいのに!ね?」
「は・・・う、うん」
「よーし!楓ちゃんはここに来たのは初めて?」
「うん」
「じゃあ私のおすすめから乗ろっか?えっとね・・・このジェットコースター!!すっごくホラーチックなんだけど超面白いんだよ!これ行こ!」
ひなは咲夜の傍にいたその子をあっという間に自分のペースに持ち込んだ。
そして、ダブルデートのはずだったのに僕を置いてきぼりにして走っていってしまった。
取り残された咲夜と僕。
鮮やかな遊園地の色合いと賑やかな客、音。
それはあまりにも僕らには不釣り合いだった。