【完】恋の太陽、愛の月
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私は今、一人雪を踏みしめる。
一緒に駅に向かっていた咲夜はついさっき思い出したかのように「生徒に参考書渡すんだった」と言って戻っていった。
「少し遅れるけど後で絶対合流する。ただし、とにかく今は駅に急げ。駅について誰も自分を待ってないなんて分かったら嫌だろ?」
去り際にそう言ったのも忘れていない。
だけど、最初二人で店を飛び出した時ほど急いではいない自分がいた。
太陽君に久しぶりに会うという緊張感と、私の事をちゃんと覚えていてくれているのかという不安があるから。
でも、進めば進むほど駅は近づいてくる。
もう五分もすれば着くはず。
「・・・」
私はぎゅっと花束を握りしめて、歩いていた。
すると、ちらちらと粉雪が舞いだした。
まるで天気までもが「急げ」と言っているようで、私は思わずため息をつく。
「急げばいいんでしょ?急げばっ!」
歩いたら五分で着く道を軽く走っていく。
ここは太陽君が転校するまでいつも三人で歩いていた道でもあった。
私が駅についた頃に電車も来た。
安堵のため息が出る。
「間にあった」