【完】恋の太陽、愛の月
【咲夜side】


………

……





『・・・先生は!ひなたさんが好きなんだよ!?』




ついさっきまで笑い合っていた楓と俺だった。

次は二人でどこかに行こうと計画もしていた。



俺は楓を本気で好きになりかけようとしていた。



・・・なのに。





『でも、心のどこかでずっと分かってる事があるんだ。・・・ひなたさんには勝てないって。どれだけ隣にいて手を繋いでいても、どれだけ傍にいても、先生はひなたさんのことを忘れようと必死な時があるの』




楓にはそう思われていた。


俺の中にまだひなたがいると感じられていた。





否定はできない。

だけど、俺にはもう楓がいればそれでよかった。




『たった数日。たった数日でも私は先生の一番になれてた。・・・それだけでもう十分!ひなたさん。お願い。先生の想い・・・ちゃんと聞いて?』




俺はどうして楓を止める事ができなかったんだろう。


・・・もっと強く楓に言えばひなたにこの事が伝わることはなかったかもしれないのに。




楓は最後まで涙を流さずにこの場を去った。


「じゃあね。先生!」



俺は去っていく楓を追いかける事もできなかった。
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