君のことが好きなんだ。
最期。
それは、突然の出来事だった。
気が付けば白く靄がかかった場所にいる。
自分の置かれた状況に戸惑いながら、辺りを観察するように見渡す。
見渡せども全体を包む靄のせいで何も見えず、困惑に思わず溜め息が溢れた。

―ココは一体何処なんだ?
「そうですね。言うなれば、異世界といった処でしょうか」
心を読まれたかの様に突然答えが返って来た。
聞き覚えの無い穏やかな声音に驚いて振り向くと、見たこともない人物がにっこりと微笑みを浮かべ立っていた。
サラサラと指通りの良さそうな色素の薄い髪。
長い睫毛に縁取られた大きな瞳。
すっと通った鼻梁。
薄桃色に染まる頬に、ふっくらと柔らかそうな唇。

…誰だ、この女
美少女と称される様な容姿にぼんやりと思う。
と、低く唸るような声が聞こえてきた。
「てめぇ、ケンカ売ってんのか」
…は?
先程とは売って変わったその声音に表情を伺い見る。
そこには先程と同じ様な微笑…に見えたが口元が若干引きつっているのが見てとれた。
「オレは女じゃねぇ。れっきとした男だ!」
そう吐き捨てるように告げると目の前の少年はクシャリと苛立たし気に髪を書き上げた。
「仕事だから丁寧に接してやろうかと思ったけど、もう知るか。お前みたいな失礼なヤツに敬意を表す必要ねぇし」
忌々しげに吐き捨てられる。
< 2 / 5 >

この作品をシェア

pagetop