Dreamer
[こんなんじゃ駄目だ..ここを、こうして...]

「何が"駄目"なの?」

「うわぁっ!!咲!それに、達也!...今、私声に出てた?」

「出てるもなにも!...ってか何してるの?」

「あっ!!まだダメだよ!完成してなっ...」

ノートを見ようとする咲を必死に止めるけど、達也に逆に動きを止められてしまった。

「ごめんね。」

「....。」

[達也、笑顔で謝られても...]

達也に呆れている間に咲は、見ていたノートを広げて言った。

「みずき!これって...!!」

「どれどれ?....これは..歌詞、かな?」

達也の発言で私の恥ずかしさは、限界を超えた。

「...っ!そうだよ!!別に変だってことくらいわかるよっ!!笑いたいなら笑えーー!」

肩で息するくらい苦しいほど、私は大きな声で叫んだ。

でも、二人の感想は私が予想したものではなかった。

「いいじゃん...!」

「うん、すごい...!」

ノートの歌詞から目を離さないで、二人は言った。

「なんか、みずきの気持ちが伝わってくるよ。これを、授業中から今までずっと書いてたの?」

「うん。放課後、優に気持ちを伝えようって決めたのはいいけど、どう伝えようかなって考えたら、真っ先にこれが浮かんで。」

「そっか。みずきなら、大丈夫だよ。」

「ありがと、達也。」

そう言うと、咲は笑いながら私に言った。

「でも、みずきは本当に歌が好きなんだね!」

「うん。やっぱり私には歌しかないから。」

[歌で優に伝えるんだ。]

そう決めた私は、ペンを握る。


「んじゃ、そろそろ私たちは優を捕まえに行こっか!」

「まったく...捕まえるって、その言い方はひどいよ、咲。」

「え~だってさぁ..」

なんて話しながら、二人は教室を出て行った。

私は誰もいなくなった夕日に染まる教室で、ペンをはしらせる。
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