Dreamer
優とのデートから1週間後...。


従業が終わって読書をしていると、教室の扉がバンッと派手に開いた。

「みっずきっー!!」

「あっ咲!..なんか、元気だね。」

私がそう言うと、咲は腰に手をあてながらピースを向けた。

「当ったり前よ!なんだって、もうすぐオーディションの日だからね!!」

「そうか~!俺らの中で、オーディション一番早いの咲だったな。」

咲の後ろからそう言って現れたのは、優。

優に"おっす"とあいさつして、咲は話を続けた。

「このオーディションで業界に入れるかが決まってくるんだ。だから、気合入れて練習しなきゃっ!」

咲はそう言いながら、ガッツポーズを作った。

「じゃあ、行ってくる!!」

「待って。」

「うわぁっ!?」

いきなり手を掴んで咲を止めたのは、その咲の双子の弟、達也だった。

「咲?今日朝ごはん、ちゃんと食べた?」

「げっ...!」

「なんで、食べないの?」

「えっと..時間なくて..。」

「なんで時間ないの?早起きしてたよね?」

「うっ...!」

そんな二人の会話を聞きながら思った。

「優、なんか達也..怒ってない?」

「あぁ..。怒ってるな。」

達也に聞こえないように小さい声で優に耳打ちすると、優も同じことを思っていた。

「もうっ!謝ってんじゃん!!達也のバカ!知らないっ!!!」

そう怒って教室から出て行ったのは、咲の方で、達也は悲しそうな顔をして立ちすくんでいた。

「達也..?」

そう名前を呼ぶと、達也はビクッと肩を動かし、私たちにいつも通りの笑顔を向けた。

「ごめんね?嫌なとこ見せちゃったね。」

「達也..。」

私は何も言えなくてうつむいたとき、横から声がした。

「なんで何も言わねえんだよ、達也。」

「えっ?」

達也が、優の言葉に驚いて顔を上げた。

優は達也の胸ぐらを掴んで、苛立ったように口を開く。

「..お前、何してんだよ?」

「優っ!駄目だよ!」

いきなりで驚きながらも、そう優に向かって声を張り上げたとき、優は私の方向いて、口パクで言った。

"大丈夫"と。

私は意味が分からなかったけど、優を信じて、行動を見守ることにした。

優は再び達也を見て、話し始める。

「お前、俺がみずきのことで悩んだとき、"一人で悩んじゃ駄目だ"って言っただろ?」

「....。」

達也が黙ってうなづくと、優は達也から手を離して、笑って言った。

「だったら、俺らに隠さなくてもいいんじゃね?」

達也は少し驚いたような顔をしたあと、小さく笑った。

「そうだったね、ごめん..ちゃんと話すよ。」

「おうっ!」

優の笑顔を見て、私は思った。

さっき怒ったふりをしたのは、達也の本当の気持ちを出させるためだと。

そう考えたとき、私の頬には笑みがこぼれた。
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