Dreamer
教室に着くと、咲と達也が待っていた。

「「おはよう!」」

「おはよ..」

二人の声に喉が苦しくなって、私は声を震わせてしまった。


[みんなに優しくされることが、今はすごく辛い..。]

みんなの笑顔を見て思ったとき、私は席を立った。

「..ごめん。私、行くねっ。」

早口で言うと、教室から走って出た。

みんなを見ていたら、自分のことを言いたくなってしまいそうだった。

だけどこれは自分の問題だから、みんなには言えない。

[みんなを困らしちゃだめだ....。]

私が廊下を歩きながら、そう自分に言い聞かして、出そうになった涙を押し戻したとき。

「「みずきっ!」」

複数の足音と同時に、聞きなれた声が後ろから聞こえた。

足を止めて振り向くと、優と咲と達也が苦しそうに息をしていた。

「みんな、どうしたの..?」

「みずき..ハァ、ハァ..お前、何かあった?」

「....」

真剣な顔をして聞く優に、私は笑って答える。

「何でもないよ。」

咲は、ため息をついてから言った。

「なんだぁ~良かった。今日のみずき、昨日の私みたいだったからさ。
心配したよ?」

「ごめん、早く..練習したくなっちゃって。」

軽く頭を下げた私に、達也が笑って口を開いた。

「そっかぁ、頑張って!じゃあ、僕たちも行くね。」

「うん。」

うなづいて戻っていく三人に手を振っていると、優が振り向いて言った。

「本当に、何もないの?」

「...ないよ。」

笑って答えると、優は"分かった"と言って歩いて行った。


「みんな...ごめんね。」

私はみんなの背中にそう呟いて、涙をこらえながら音楽室に走った。

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