Dreamer
「歌えないって..どういうことだよ..?」

「っ!?」

突然聞こえた声に振り向くと、そこにいたのは優と咲と達也だった。

「みずき..今、歌えないって..」

「みずき...?」

「....。」

私の方を見てみんなは驚いていた。

[このまま全部聞かれたら、隠してきたことが無駄になっちゃう..。]

そう思った私は、急いで涙を拭いてみんなの方に走った。

「そんなわけないじゃん!大丈夫だよ!ちょっと上手く歌えなかっただけだからさっ!
みんなも、もう帰り?一緒に帰ろう!」

三人の手をとって教室から出ようとしたけど、誰もついてきてくれなかった。

「...正直に話すまで帰らないし、帰らせない。」

そう言った優は教室の扉を閉めた。

咲は私の手を掴んだまま叫ぶように声をだした。

「あんたは、なんで隠すの!?前言ったこと、もう忘れたっ??頼ってって言ったじゃん!!」

「...ごめん。」

[これだけしか、みんなには言えない。]

下を向いてそう言うと、咲は私の両肩を掴んで声を張り上げた。

「ごめんじゃ分かんないよっ!!!ねぇ、みずきっ!!!」

「咲!落ち着いて!」

私に怒鳴る咲を止めたのは達也だった。

咲の肩に隠れて達也の顔は見れなかったけど、
達也は咲を椅子に座らせて、すぐに私の方を見て口を開いた。

「みずき、聞いてもいいかな?」

私は小さく首を縦に振った。

「なんで、言いたくないの?」

「...みんなには、関係ないことだから...!」

本当はそんなこと思ってない。

でも、言わないとみんなは、私のこと放っておいてくれないと思った。

怒られても、蔑まれても、しょうがないと思っていたのに、誰も怒りもしなかった。

むしろ達也は、さっきよりも優しい声で言った。

「それは、みずきの本当の気持ちじゃないよね?」

「...っ!!」

見透かされてるって思って、すぐに目をそらした。

「あ....。」

だけどそのとき、もうみんなは知ってると勘で分かった。

知ってて、私から言うことを待ってるんだと。

それは、みんなの目を見たら分かることだった。


そう思ったら、ずっと言えなかった気持ちがあふれ出た。

「ごめん、ごめん..なさいっ!!私っ..あの、ね..!」

喉が詰まって上手く話せない私に、達也は笑って言った。

「ゆっくりでいいよ。ちゃんと聞いてるから。」

「う..ん..。」

涙でぐちゃぐちゃになった私の顔を、咲は"まったくもう~"と言いながら、ハンカチで拭いてくれた。

「咲...ごめんね..。」

「いいって。私こそごめん.."お芝居"とはいえ、泣かしちゃうなんて思わなくてさ。やり過ぎちゃった。」

「へっ!?お芝居!?」

驚きで涙が一気に引いていった私を笑いながら、咲は言った。

「ははっそうだよ!優の提案でね!!」

さらにびっくりして優を見ると、怒ったような顔をしていた優の眉毛は、よく見るとピクピク動いていて、優は大きく息を吐いて言った。

「ぷっはー!!もう無理!芝居って難しいな!まぁ、成功したし。いっか!」

みんなは笑っているけど、驚きすぎて私は固まっていた。

だけど、みんなを見ていたらさっきまで悩んでいたことが、
バカらしくなって私は、久しぶりにみんなと向き合って話すことができた。


そして私はみんなに話すことにした。

両親のことや声のこと、全部を。











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