Yes,sir.

お気楽現代古風魔法使い

安西徹無(ｱﾝｻﾞｲﾃﾂﾑ)は、のんびりとただ自分の家に帰るための帰路を歩いていた。

あいにく雨のため傘をさして。
砂利を踏む音が狭い道にやけに響いた。

すると、携帯が電話の着信を伝える音がする。
単調な音で耳に残った。


「――もしもし。」


徹無は2コールもしない内に電話に出た。
電話の向こう側から聞こえた声は変声機を使った声。
若干低めの声であった。


『よォ、安西家の三男坊。』
「あ、アンタか。何？また司令？もとい命令？」


けらけらと渇いた笑いを徹無は漏らす。
近くにあった木箱を自分に引き寄せ雨の当たらない場所に設置した。
それから徹無はそれに座り片方の肩に携帯を挟んだ。
傘を畳むために。


徹無が《アンタ》と呼んだ人物と電話をすれば短く終わることはないからであり、別の場所に赴かなければならないか、その場で待機をしろと告げられるからであるため彼は傘を畳んだ。


『三男坊よ、今から最寄りのバーに行って来い。』
「は？なんでまた。第一オレ未成年だしー。」
『大丈夫だ。どーせばれても暴れてその店壊滅させりゃあ良いだろ。』


電話の向こう側からはクスクスと怪しい笑い声が零れている。
それを徹無は不気味ともなんとも思わなかった。
いつものことだ。

「つまり…――やれと？それが今日の司令？」
『当たり前だ。あそこは前々から闇取引とかされてたからな。』
「わぁー、僕、ぜぇんぜん知らなかったなぁー」
『とっとと行けっつの。』


無理矢理電話を切られればディスプレイを見てみる。
通話時間は、会話はあれだけ少なかったのに10分52秒を表示していた。