Yes,sir.
「ほんじゃ、行きますか。」

パチン

携帯を閉じれば徹無は木箱から腰を上げた。
砂利をもう一度踏み鳴らし最寄りのバーに向かうことにしたのだ。



《アンタ》、もとい司令官のような人物は、何故、自分の居場所が手にとるように分かるのかが徹無にとって不思議だった。
発信機でもついているんじゃあないかと思い体の至る所を弟に手伝ってもらい(けしてやましいことではない)調べてみたのだが、そんなものはなかったのだ。

―これ以上詮索しても彼について分かる筈がない。―


そう直感した徹無はその日からぱったりと発信機やら彼について調べることをやめたのだ。

そこで《アンタ》についてのことを思い出すのをやめた。
例のバーに着いたからである。
ドアを開ければむっ、としたアルコールの匂いが鼻についた。
嗅覚をひどく刺激し、徹無は眉間に皺を寄せる。

数十歩進むとテーブルを数個通り越してカウンターにつく。
目の前にある椅子を回し背もたれの無い方をこちらに向けた。
それから座るとマスターらしき人物に飲み物を注文する。
もちろん、ノンアルコールのジュースだ。


「…」


ちらり
横目でマスターらしき人物を見るとしっかり準備をしている。
というのは嘘でこちらを、準備しながら盗み見ていた。
さすが《アンタ》だ。
新人、新しい顔触れには何か試験等あるらしい。


「マスター、【レンツェ】。」


その言葉を口にした途端にマスターらしき人物の目の色が変わった。
この言葉はいわゆる合言葉で闇取引を知っている、という意味合い。
簡易にすると、


「奥に通せ。」


徹無は口に笑みを作りながら頬杖を着いて言った。
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