ヒールの折れたシンデレラ
「ちょっと強引だった?嫌なら言って」

「……じゃ、嫌じゃないです」

首を左右に振りながら答える。

「よかった。嫌って言われてもやめる気ないけど」

宗治は耳もとでささやきながらゆっくりと千鶴を横たえる。

「やっぱり……ズルい」

「運命だと思って受け入れて」

クスクスと笑いながら、耳、こめかみ、首筋とキスを落とされる。

そして唇に一度小さなキスを落として「可愛い」と呟いたあと、激しく唇が合わさる。まるで全部食べつくすかのようなキスに千鶴も腕を宗治の首に絡めて答えた。

キスをしながらも宗治のいたずらな手が千鶴の体を確認するかのように行き来する。

宗治の手で体中溶けそうなほど熱くなる。

好きな人の腕の中にいること、恥ずかしいけれど嫌じゃない。

(もっと触ってほしい。もっと溶かしてほしい。体中――頭の先からつま先まで彼で埋め尽くされたい)

こんな風に『もっと』と自分がほしがるなんて思ってもみなかった。

「もっと好きにして――」

「っ……!」

驚いた宗治が目を見開く。

「お望みどおり、思いっきり好きにしてやる。だから俺のことも君が――千鶴が好きにして」

嬉しそうな笑顔が千鶴の目の前にある。

千鶴はそっと手を伸ばして宗治の唇に自ら口づけた。
< 109 / 217 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop