ヒールの折れたシンデレラ
***

「……っは、はふ」

ピンク色に染まった肌が少し汗ばんでしっとりしている。

吸い付くような肌に自分の所有の印を千鶴の体に刻む。見えるか見えないかギリギリのところの赤い印。

(独占欲の塊だな。俺……)

自分で自分をコントロールできていないことを自覚して宗治は自らに呆れていた。

肩で息をしている千鶴の前髪を掻き分けて額にキスをする。

すると目は閉じたままだったが、口角をきゅっとあげて笑顔になる。

(こういう反応が俺を煽ってるってことわかってないんだろうな)

これ以上無理をさせないために、宗治は千鶴の隣へ体を横たえた。

腰のあたりをぐっと引き寄せると体を宗治のほうへ向けて千鶴は腕の中におさまる。

「無理させすぎた?」

宗治は自分としてはまだまだむさぼり食べたい気分だったが、千鶴の様子を伺う。

「少し。それに今日はこれでいっぱいいっぱいです。はずかしい」

自分の胸に顔をうずめる千鶴の髪を耳にかける。

「あんなことしといて今更はずかしいもなにも」

からかうようにしていう宗治に「思い出すのも口にするのも禁止!」そういって桜色の爪をした人差し指を唇に当ててきた。

その指を“ぺろっ”となめてやると「ひっ!」という色気のない声が返ってきた。

そんな風にじゃれあいながら二人は大切な時間を紡いでいく。
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